グラフ
子宮内膜の組織診断について
蜂屋 祥一
1
1東京慈恵会医科大学産婦人科教室
pp.601-602
発行日 1965年8月10日
Published Date 1965/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203307
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子宮内膜の診査掻爬による組織診断には,他の臓器の場合と多少異なつて,採取方法(不可視的),標本作製,検鏡の過程において常に幾つかの陥し穴がかくされていることも覚悟してかからなければならない。採取された内膜組織塊のそれぞれは子宮腔内で占める場所,層の深さによつて組織所見の上で生理的偏差があるばかりでなく,細断された組織片であるため病態の拡がり,健常組織との対比が連続的に観察できないという点で診断を困難にする一つの問題点がある。しかし,何にもまして,子宮内膜の組織診断に重要な因子となるのは年令と正確なる月経歴(出血歴)であることを忘れてはならない。
今回,取り上げた問題は最終段階の検鏡で誤り易い点である。すなわち,大部分の内膜像はほとんど正常内膜を示しながら一組織塊にのみ,異常像が認められた例,またStep-sectionによつて始めて器質的変化の認められた症例である。ここに示す症例のごとく分娩・流産後の出血例はしばしば機能性子宮出血との判別が困難で器質的変化(妊娠成分遺残)の確認は重要な診断根拠となる。
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