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人工授精
ふじ しうこう
pp.50-51
発行日 1954年6月1日
Published Date 1954/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200629
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私は今まで長い間自分の頭の中で考えていた愚考をここに発表し,專門の先生方や同業者の方々の御批判をお願いできるならばこの上もない幸と存じます.問題が問題だけに青年である未婚の私には未知数の事も多いと思いまして勇気をふるい何時迄も頭の中におくより皆樣方の御批判を受けこの問題を解決いたそうとする次第です.受胎調節指導員である私達は妊娠を自由にさせる事にあると思うのです.それは必要な時に必要な子供を産む事だと思います.
昨年の暮私の村で産兒調節の大家,ドクトル馬島僺先生が講演会をもよおして下さいました.此の時先生が妊娠する人を妊娠させなくする事より妊娠しない人に妊娠させる事の方がむづかしいと申されました.私は此の時「ほつと」したのです.私も馬島先生から直接産兒調節の御指導を受け,この山の中で農村の人々に指導しているのですから受胎調節指導員としての責任上妊娠を防ぐことだけではなく妊娠させる事も指導せねばと努力しているのですが,子供のない人に子供を産ませる事は,妊娠を防ぐ事よりはるかにむづかしく困難であると,つねになやんでいたのですが,天下の大家の口からこの言葉を聞き胸をなでおろしたのです.青ニサイの私ですもの当然とつくづく思いました.
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