講座
人工授精について
山口 哲
1
1東京歯科大学
pp.30-34
発行日 1957年5月1日
Published Date 1957/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201263
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はしがき
今日では人工授精という言葉はひと頃と違つてそう耳新らしいものではないが,長年不妊の悩みに明けくれしている人々にとつて最後の希望を得る手段となつているものである.従つて本誌の読者諸姉は或る程度の知識を持つている必要があり,時にはその実施方法まで求められることもあろうと思われるので今まで長年に亘り私が実行して来た経験を土台として人工授精の大略を述べてみたい.
先ず人工授精の字義である.時として人工受精なる語を散見するが,受精とは精子と卵子とが融合することであつて,授精とは全く違つた意味である.唯発音が同じであるに過ぎない.人工授精というのは精液を女子の性管内(子宮腔,頸管,腟)に人工的に注入器をもつて注入することである.
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.