特集 避妊と不妊
不妊症の原因,診斷及び治療
人工授精
山口 哲
1
1慶大醫學部産婦人科教室
pp.633-636
発行日 1952年12月1日
Published Date 1952/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200738
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1. はしがき
人間に行われた人工授精の最初の記録は,1799年にJohn Hunterが尿道下裂の男子の精液を人工的にその妻の腟内に注入して妊娠に成功したのに初るが,多くの學者の注目を惹くに至つたのはそれから約100年を經た1866年に米人MarionSimsが得た成功例である。すなわち彼は性交後直ちに後腟圓蓋部より精液を採取して子宮腔内に注入する方法を27例に行い成功1例を得たのである。その後,多數の學者により種々な方面より詳細な研究がなされたが,中でもRohleder(1911年)の研究が最も詳細で,彼は65例に人工授精を行い成功21例を得た。
かくして人工授精は次第に不妊の治療法として確固たる地位を占めるに至り,醫師のみならず一般人ことに不妊夫婦の大きな關心事となつたのであるが,實施法に於ても成功例の數においても大きな發展を遂げたのは實に最近10年間であつて,アメリカでは既に人工授精兒が20,000人も誕生していると報ぜられている。
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