文献紹介
X染色体の単一性
pp.668
発行日 1963年8月10日
Published Date 1963/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202870
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染色体は各々1対あり,対の染色体の対応するジーンが遺伝を決定するので,たとえばヘモグロビン分子の一半はひとつの染色体のジーン,他半は対応する染色体のジーンで合成されると考えられている。このふたつのジーンはidenticalであるが,ひとつか異常であると,混合ヘモグロビンたとえば鎌状赤血球のHbASのごときが生ずる。酵素欠損が主因となつている遺伝病はふつうこうした型の発生である。ガラクトース血症ではphosphoglactose uridyl transferase欠乏だが,異常ジーンでこの酵素がつくれないのではなく,それに似た蛋白は作られているが,分子が変形しているので酵素作用をもたないと解される。女子のX染色体のジーンにもそれは適用できる。今日うるさいG−6—P dehydro—genaseが1例で,女子正常には赤血球全長にG−6—Pdが分布するが,いわゆるcarrier femaleでは赤血球の1/2長さがそれをもつにすぎない。男子ではX 1本であり,女子の半分のG−6—Pdをもつにすぎないわけだが,実はそうでなく,ちやんとfull amountのG−6—Pdをもつている。Xが異常に多い個体ではこの酵素が異常に多いかというに,そうした15症例のうち異常はわずか1例で大多数は正常である。してみると,女子のXは1本だけでアクチブで,他のXはdormantであろう。
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