同人放談
内診漫談
笠森 周護
1
1金沢大学
pp.330-331
発行日 1962年4月10日
Published Date 1962/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202616
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腟内診の様式は伝統的に或いは個人的に極めて多様であるが,一度着いた習慣は変えがたいものであり,またその様式が次第に身に着いて来るので,これで良いのだと思い込むようになるものであるが,お互いに語り合つて見ると,よりよい様式が見出されると思われる。
私の東大時代の先生や先輩の内診様式を思い浮べて見ると,看護婦が患者を検診台に乗せ,昇汞水などで外陰を洗滌すると,検者は素手で,まず内診を行つた。当時はゴム手袋は分娩応急処置にしか使用されないで,定時手術は厳重に消毒された素手で行われるのが常であつた。検者は内診しながら所見を丁度プロトコールを朗読するような口調と早さで,総てドイッチで但し多くは日本語式の独乙語で約2分余りで述べるのを,ベシュライバーが速記式に筆記したものである。触診が終ると検者は手を洗い,看護婦は右手にSimon腟鏡,左手に側板を持つて,まず腟鏡を次に側板を挿入して,子宮腟部を平易に出すことを重要な技術とした。このとき検者は概ね立位のまま,腰を屈めて腟部を一瞥するだけで視診を終り,必要に応じて消息子診を行い,続いて腟洗を行つた後に腟坐薬と綿タンポン或いは薬液浸潤タンポンを行つて診療を終つた。
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