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特集 産婦人科診療の今昔
婦人科学
不妊症診療
Treatment of sterility
篠田 糺
1
Tadasu Shinoda
1
1岩手医科大学
pp.39-43
発行日 1960年1月10日
Published Date 1960/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409202116
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私が大学を卒業したのは大正6年12月で,医局に入つたのが7年1月であるから,今から満42年の昔となつた。その頃の話をしても今の方々にはピントが合わないだろうが,ふり返つて見れば医学は長足の進歩をしたものだ。医学に限らず,すべての科学と文化の発展は全く驚ろくばかりである。その当時には夢物語と考えられていたことが,現在沢山に実現し,実施され,むしろ普通になつている今日だから,昔話は今から見れば滑稽にさえ見えるだろう。
不妊症の診療に限らず,医学全般についても,その当時は油浸の顕微鏡とレントゲン発生装置(器械整流ですぞ)が主要な設備であり,膀胱鏡も大切な器具の1つであつて,化学研究室には孵卵器と天秤とピペット,ビューレットと化学薬品等がある位で,定量,定性分析は主として点滴法によつたもの。細菌検査も数種の培養基と色素とで,組織検査も数種の染色法に過ぎなかつた。従つて細菌の分離培養は困難であり,細菌の大凡の分類ができれば上等の方であり,組織では病変の程度,腫瘍の種類を決定すれば満足し,機能上の変化などほとんど不可能であつた。
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