症例研究
急性外陰潰瘍の細菌学的考察
石井 次男
1
,
林 公健
1
1信州大学産婦人科学教室
pp.655-659
発行日 1954年11月10日
Published Date 1954/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201116
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緒言
急性外陰潰瘍はLipschutz(1912)によつて独立疾患として記載された経過の急性な,主として若年婦人の外陰殊に陰門及びその附近に発生する潰瘍で,潰瘍面からは毎常B.crassus(LiPsch-utz)が証明されるのみならず,時には血液や皮疹・小膿疱からも本菌が見出されることがあり,従来B.crassusが本症の病原体と考えられている。然しB.crassusを動物或いは人体に接種して潰瘍を生ぜしめたという報告はないではないがその後の追試は全て不成功に終つており,従つて本菌を以て急性外陰潰瘍の病原体と断定し得る段階までには至つていない。最近注目を浴びているのは,本症がBehcet症候群(虹彩炎・前房蓄膿等の眼症状を伴う陰部及び口腔の潰瘍)とiden-ticalなものであるとの考えである。Behcet症候群は一般にウィールス感染によつて起ると考えられているがサルファ剤やTibioneの使用によつても発病することが知られており,従つてBehcet症候群の中にはアレルギー性の原因によつて起るものもあるようである。
何れにしても本症の原因は明らかでなく,B.crassusの意義に関しては尚お幾多の疑問が残されており更に今後の研究に待つ処が大きいが,吾吾は最近本症の1例に遭遇し,該患者より腟桿菌及びB.crassusを分離して聊か実験をも試みたので症例と共に報告する。
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