原著
岡大産科に於る異常後出血の統計
早藤 勇生
1
1岡山大学医学部産婦人科教室
pp.517-521
発行日 1954年9月10日
Published Date 1954/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201090
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緒言
分娩後出血が我々の領域に於て如何に臨床的意義が大であるかは今更言を新にする必要は無い。私は岡山大学医学部第1,第2産院に於る昭和9年4月(1934)以降,昭和27年3月(1952)迄の分娩8268例中,異常後出血例に就て統計的観察を試みた。然し戦時の人手不足,及戦災による第2産院の焼失等により,一部に記載不明の箇所あるは遺憾である。
さて,幾何量以上を以て異常出血とすべきかは理論的には各個人差があつて限界を定め得べきものでは無く,Postoreも此の点を指摘して居るが統計を取る以上基準を設ける必要がある。生理的分娩後出血多量の限界は,従来500〜600ccとされて居り,成書(安藤,長谷川,真柄)及文献(岩田,今津等,九嶋,德永,水原,市村,EdwardDavis)には500ccと書いてあるものが多い。又本邦に於ても,小畑,石井の600ccと云う新知見があるが,私は全例に於て数量的記載明かな第1産院の昭和19年〜27年の分娩2030例から500cc以上の例数を集めたところ,160例(7.88%),次に第1産院の前半期,及第2産院の分娩合計6238例中,多量とのみ記載のあるものを合せると491例(7.87%),又総てを通じ500cc以上と,多量とのみ記載あるものを合せると,分娩総数8268例中651例(7.87%)で,三者は同率であつた。
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