原著
産褥惡露量に就いて
小林 敏政
1
,
加藤 一雄
1
1都立大塚病院産婦人科
pp.396-399
発行日 1954年7月10日
Published Date 1954/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201054
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悪露は胎盤及び卵膜の剥離によつて出来た子宮内創面からの分泌物を主としているために,我々産科医は産褥子宮の復故診断に当つて,悪露の状態を好個の指針として観察して居るにも拘らず,その量的関係に於いてすら諸家の見解も区々で,妥当と思われる数値の認定さえ困難な状態である。従来の文献によつてもその測定法に関する詳細を窺知出来ないので,単一な比較も一応は困難ではあるけれども,Gassnerの8日間に1500gに対してGilesは315g,Steinbrecherは僅に,254gと述べ殊に我国の成書には第1表の如く500〜1500gという数値が示されている。筆者等は本邦婦人ではこの点が如何かと観察したところ,意外に少い数値を得,且つ悪露計測値から従来産褥時に行われて居る処置等に関して以下述べる次第である。
実験はすべて都立大塚病院入院滅期分娩患者で,悪露の採集はガーゼ被覆の脱脂綿に吸牧せしめ,之を密閉瓶中に保存し,翌朝24時間分を重量法により計量した。測定用綿は1包毎は10g (感度0.1g)に調製したもので蒸気滅菌を行い,滅菌後も計量試験を行って1包の誤差範囲を0.1g以内に留める様にした。但し分娩第1日には悪露量が多いので50gのものを調製使用した。又測定綿の使用開始は分娩2時聞後(分娩後2時間迄を後出血として除外した。)からとし,以後は測定綿のみ外陰部にT字帯を以てあて,悪露を吸牧せしめた。
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