診療室
妊娠惡阻の精痘療法
矢內原 啓太郞
pp.487-488
発行日 1953年8月10日
Published Date 1953/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200884
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矢追博士創製の精製痘苗(精痘)は1929年に發表せられ既に24年を經過し種々の疾患特に「アレルギー」性疾患の治療に應用せられ妊娠惡阻に對しても亦有效とせられておるが從來は入手困難の不便があり僻地に於ては應用の機會もなかつたが近來は市販されており使用上便利である。筆者は最近重症の惡阻で萬策の末將に人工流産を決意しようとした際に本精痘只一回の注射がよく連日連夜絶え間ない嘔吐を治し誇大な言い方ではあるが「未だ曾て如斯妙藥を知らなかつた」と云う感じを受け順次實驗を重ね全17例に及び何れも著效を認めたので惡阻には一應試みる價値あるものとして報告し且つ推奨したい。
荒井及赤井兩博士は(綜合醫學5巻13號,1948年7月)實驗16例に就て効果100%(但し重症例を含まない)と報告し,赤井博士は同年11月には約100例に就て日赤醫學會で報告した。安井博士は輕症には有效であるとし長谷川教授は輕症には少しくよくなる程度で惡くなるものもあると云い樋口教授は有效1例を知つているが只1例だけでは效果の判定は困難であると云う。(産婦人科の世界第1巻6號1949年9月座談會記事)赤井博士は100%の效あり再發は只1例で而も更に4回の注射で全治に至らしめたと云う。(ヴイルス療法,日本醫學雑誌株式會社發行1950年3月)その他の惡阻の治療に本劑を使用した報告は筆者の手近に見當り得なかつた。
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