2頁の知識
酒の良さ惡さ
臺 弘
1
1都立松澤病院
pp.18-19
発行日 1953年1月15日
Published Date 1953/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907220
- 有料閲覧
- 文献概要
酒位良いの惡いのと騒がれてしかも決着のつかない飲み物はない。私は酒の惡口を何頁でも書けるけれども,酒好きの友達はそれを見て,にやにや笑うだろうし,私だつて彼と一緒に飲むことを断るのはよそうと思う。
言う迄もなく酒の働きはその中のエチルアルコールによる。之は麥酒には5%位,日本酒には15%位,ウィスキー焼酎の類には40%位含まれて居る。エチルアルコールは誠に獨特の藥で,米や麥の澱粉を麹や酵母の働きを借りて人間の體が餘りやらぬ仕方で一寸分解させただけのものだから,體内に入ると酸化されて,アセトアルデヒド次で醋酸になり,食物中の含水炭素の酸化される代謝の道に又戻つて了う。だから酒を飲んで居ると或程度米の飯の代用になり,結構酒太りに太つて居られる。所がアルコールは吸收が早い上に,體内で酸化される速さが大體きまつて居り,酒飲みの小便は臭いと言つても尿に出て行く分量は飲んだ量の數%にもならないので,體の内に溜つて段々にはけて行くより仕方がない。酔ひどれ運轉手の血液や呼氣のアルコール含有量をしらべると大まかに酔いの程度がわかるのはその爲である。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.