原著
婦人科開腹手術患者の肝臓機能に就いて
船橋 守
1
1名古屋大學醫學部産婦人科學教室
pp.264-270
発行日 1953年5月10日
Published Date 1953/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200828
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緒言
肝臓機能検査法は肝臓疾患の診斷に用いられるばかりでむく,色々の疾患の機能,病態研究や潜伏性肝障碍の發見に應用されている。
而して肝臓の潜伏性障碍を早期に知る事は諸種の疾患を治癒させる目的のために,手術と云う大きな侵襲を病的状態にある身體に加えねばならぬものにとつては是非とも必要である。肝臓がその機能的余裕を失い,辛うじて生理的範圍の機能を途行している様な場合に於ては,大した事ではないと思われる程度の手術侵襲で急に代償不能に陥入る事があり,特に注意せねばならぬと早くから指摘されている。手術患者では術後追日的に肝機能検査を行う事に依つて治療の方針及び術後の經過豫後の判定に他の臨牀症状の觀察と相埃つて明確な見解を與えてくれると思う。従つて古くから術前,術後の療法に幾多の努力がなされ,就中手術豫後と肝臓機能に關しては優秀なる業蹟が多數存している。然し吾婦人科領域に於ては之に關する研究は比較的少く,Enfinger,Wiesbader,Irsigler,水原,加來,今泉,小林,高橋,菅田土井氏等の研究があるが,之等は何れもアゾルビンS法,尿ミロン反應,サントニン法,血清ビリルビン,尿ウロビリン體試驗法,馬尿酸試驗等單獨の方法に依つている。而して肝臓は複雑多岐なる機能を有するため各種の方法を實施し,それ等を比較検討し,成績を綜合考按して判定する事が必要であると云われる。
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