境界領域
手術と蛋白代謝
福田 保
1
1順天堂大
pp.189-194
発行日 1953年4月10日
Published Date 1953/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200811
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まえがき
生體の維持や活動に必要なるエネルギーは,體内に取り入れられ或は貯えられた蛋白質,脂質,糖質などの物質の酸化分解によつて産出される。これ等の物質が口より摂取され,消化管内に於て消化吸收されて,エネルギーに轉換されるまでには,極めて,複雑した生物學的過程を經て來ている。かかる過程に與る肝臓其他の重要臓器の機能が健全であることは,勿論大切なことであるし,その運轉に必要なる物質も大切であつて,水分,電解質,ビタミン類,其他種々の酵素などが,たえず働いていることも,見逃し得ない事實であり,またこれ等の物質の動きを支配しているホルモンの力も考慮すべき問題である。
そこで今手術と言う傷害が生體に加えられたとする。その傷害に反應しこれを修復していくためには,生體の維持活動に要する以外に多量のエネルギーを必要とするのは當然のことである。エネルギーの元となる貯えは生體内では充分にあるのが常であるので,健康體では普通の手術などは餘り問題にされないが,手術侵襲が法外もなく大であるとか,種々の疾患のために患者の衰弱が甚しく,體内物質の貯えも涸渇して來た状態の者も手術の對照となることがあり得るので,ここに外科醫の苦心もあるし,問題となる場合が少くない。
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