特集 婦人科領域のAndrogen
アンドロヂエンと蛋白代謝
沢崎 千秋
1
,
小野 和男
1
,
芦田 義通
1
,
井上 薫
1
,
江村 正英
1
1京都府立医科大学産婦人科学
pp.1061-1065
発行日 1955年12月15日
Published Date 1955/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201290
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.緒言
現在医学の動向はあらゆる分野に於て代謝に関する研究が中心となり,其の研究の発展と共に幾多の問題がなげかけられている。就中生体を構成して居る体蛋白が,体内で如何に合成され又分解されて行くかと云う問題は,多くの学者の永年に亙る研究に依り次第に解明されつゝあるが,1935年KorenchevskyやKochakian等が去勢に依る体重減少と之の男性ホルモン投与に依る回復につぐ増加の事実を発表して以来,蛋白代謝機序に各種ホルモンが関与していることが漸く究明されるに至り,現在ではその事実はもはや常識化されているが,その機序の詳細については未だ不明の点が多い。
抑々体蛋白は摂取された蛋白がその構成成分であるアミノ酸に一旦分解されて吸収され,之が主として肝に於て複雑な過程を経て(第1図),その一部が再び合成されたものであり(同化過程),他のアミノ酸は脱アミノ化に依りケト酸とアンモニアとになり,ケト酸は糖質や脂質と共にエネルギー源として使用され,アンモニアは肝に於いてオルニチン回路により尿素となつて排泄される(異化過程)。而して,体蛋白は固定されたものでなく,斯如く生体の部位,臓器によつて遅速の差はあるが,たえず分解合成されつゝいれかわつて貯蔵蛋白としての意義をもつている。このように生体内では常に同時に蛋白の合成と分解との両過程が営まれつゝその間に動的平衡を保つて居る。これが蛋白代謝からみた生命の姿である。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.