綜説
妊婦榮養に關する綜説(その3)
塚本 胖
1
1愛育研究所母性保健部
pp.163-166
発行日 1953年3月10日
Published Date 1953/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200805
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妊娠時のビタミン代謝
1)ビタミンA代謝
ビタミンA代謝も他の各種榮養素と同樣に,恐らく妊娠の影響をうけて亢進することは想像に難もないが,その代謝亢進の程度,攝取必需量についての正確な根據は末だ究明されていない。妊娠時ビタミンA (以下ビAと記す)缺乏の影響に關する諸研究を見ると,Mellamby (1929),Green(1931〜5),Clausen (1934)等は細菌感染率が高まり産褥熱を合併するものが多いと,Masonは母體性器の細菌感染や性機能減退が見られると述べTompkins (1941)は妊娠3〜4ヵ月の胎兒死亡の1原因としてビA缺乏を擧げている。妊婦血中ビA量及びカロチン量についてGaehtgens(1937)は妊娠月數と共に血清ビA量は減じて非妊時の80%となるといい,又30例の妊婦中その36.6%が血清中ビA値は零或いは痕跡程度で,尿中ビAを證明し得たものは8例に過ぎず更に陰性者にビAを負荷すれば排泄か陽性となるが,血清中ビA量と尿中排泄とは必ずしも平行關係にないことを認め,妊婦にビAが少いのは胎兒への移行と尿中への排泄によるのだろうと述べている。血中カロチン量は寧ろ非妊婦よりも稍高値を示している。
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