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アメリカ便り
林 基之
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1東京大學産科婦人科學教室
pp.81-82
発行日 1952年2月10日
Published Date 1952/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200589
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テリンデ教授の手術ぶり
アメリカには,婦人科手術で特にすぐれていると言われる人は少いらしい。然しジョンスホプキンス大學のテリンデ教授の腟式手術は,特徴があつて,方々から見學に來る人も多く,その手術書も,腟式の部は,よい所が見られる。先づ,彼の最も得意とする腟式子宮剔除術の模様をお知らせする。特に,彼が自慢なのは,更年期を過ぎたり,又は未産婦で腟の狭い場合にも,苦もなく取ると云う事と,筋腫があつて,小兒頭大に近いものも,何とかして,筋腫核をえぐりとり乍ら子宮を小さくして取るということである。
子宮剔除で,彼が何故に腟が狹く,子宮が垂れて來ないのを,うまくやるかを考えて見るに,問題は彼が創製した鉗子にあるらしい。即ち鈎が先端になく,少し中央に近い所にあつて,細かい歯がほられていて,固く子宮組織を噛むことが出來る。彼が皆に見せてくれたのと同じのを,早速醫療器械屋で求めようとした所18ドルもするので止めたが,確かにつくりが頑丈で,而もしつかりと噛み合される。之なら相當固い組織も確實にはさみうる。法の如く子宮腟部に圓状切開を入れ,前方は膀胱が壓排されて,膀胱膜頸部筋膜が露出するようはがし(之は吾々のやるのと全然同じである)腹膜が見えても之を開かない。腟が狭い場合には此處に達するのに大層困難を感ずる。
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