原著
産婦人科領域に於ける開腹手術患者手術前後血清膠質滲透壓の變化に就て
吉川 康
1,2
1名古屋大學醫部産婦人科教室
2名古屋大學附屬病院分院産婦人科
pp.20-23
発行日 1952年1月10日
Published Date 1952/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200571
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
緒論
血清膠質滲壓透は血清滲透壓の一分壓を分擔するのみであり,且つ亦膠質の分子量は粗大であるため,その値は僅少であるが現在では淋巴の形成,浮腫の成因,腎臓に於ける尿の瀘過機轉等の如き重要なる生機現象の機序に關與すること大なる爲血清膠質滲透壓の顧慮なしには前記の現象は了解されない程重大視されて來た。而して血清膠質滲透壓を構成するものは蛋白質分子による滲透壓とDonnanの膜平衡による電解質の不平均分布による滲透壓の二つであり,その内主成分は前者にして正常ではその比は5:1である。從つて血清膠質滲透壓と血清蛋白の性状との間には極めて密接な關係があり,この事は先人諸家の解明するところとなりFarkus Wells等は血清膠質滲透壓は血清蛋白濃度竝アルブミン,グロプリン比に完全に比例するとした。依つて今,血清膠質滲透壓が蛋白質の分子濃度に比例するものとすればアルブミンとグロブリンとでは前者の分子量約70,000,後者の分子量約150,000でアルブミンの方がグロブリンより膠質滲透壓に寄與する度合が大である。余は嚢に産婦人科領域開腹手術患者の手術前後に於ける血清蛋白變動の様相に就て詳細検索發表した。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.