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産婦人科手術時に於ける腰髄麻醉に依る血壓變動特に起立試驗との關係について
吹田 淸純
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1京都大學醫學部産科學婦人科學教室
pp.101-111
発行日 1948年6月1日
Published Date 1948/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200117
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第1章 緒論
手術の豫後判定は重要な問題であり、之に對しては種々の因子が關與する故其の各々に對し細心の注意を拂ふ可きであり、就中循環器の機能檢査は忽がせにすべきではない。而して術中並に術後の虚脱の原因は主に潜在性循環機能障碍であるといはれてをり、これには末梢部血管に於ける循環機能障碍の方が寧ろ心臟自體の機能より大なる意義をもつてゐる。而してその檢査法として知られてゐるものに起立試驗がある。これは重力による末梢血管への血液鬱滯の爲起る血壓降下の程度を檢する方法である。他方手術時に行ふ麻醉法の如何も手術豫後に影響するところが大きい。而して産婦人科的手術に於て最も廣く用いられてゐる麻醉法は腰髄麻醉であるが、時にこれには危險を伴ふ事がある。この危險は麻醉藥そのものの毒作用、循環系筋肉系へ不測に麻醉作用が擴大する事、延髓重要中樞が不測の直接麻痺を蒙る事等から發生すると云はれており、この中使用藥劑の選擇及び實施法に依りさけられるものもあるが、循環系に及ぼす影響は特に臨床上大きな意味を持つてゐる。即ち麻醉の擴がりに應じて血管收縮神經痲痺 に依り血管緊張低下し、循環血量は減少し、心臟への血液流入減じ、爲に血壓下降し、脳及び延髓中樞の酸素缺乏を來して全生活作用低下するに至る。
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