原著
色素の子宮腔内注入に依る卵管疏通性檢査に於る注入色素の定量的考察
勝野 六郞
1
,
古谷 博
1
1東京大學醫學部産科婦人科學教室
pp.399-404
発行日 1950年10月10日
Published Date 1950/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200395
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第1章緒言
微量定量が正確且つ排泄が迅速で毒性の殆どないP.S.P.test (フェノール,スルフオンフタレイン=C19H14O5S)は,1910年Rowntree Geraghtyにより腎臟機能檢査に用いられ,爾後該領域に於ける廣汎な應用研究は枚擧に遑がない。其の排泄開始は靜脈内注射時(0.6%P.S.P.1cc)には3〜5分後,筋肉内注射時には5〜10分後であり,その1時間後の排泄量は35〜60%,2時間後には更に15〜20%で,正常時には2時間迄に50〜80%が排泄され,腎機能不全時には一般にその排泄開始が遲延すると共に,排泄量も50%以下に留まるとされている。1948年G.Speckは木色素を以つて卵管疏通性檢査に應用し本邦でも三谷は0.1%インヂゴカルミンを用い該檢査法をChromotubationと命名したが,爾來追試者が續出している。(小國,渡邊,今丸,津久牛,高原),患側の判定が不可能と言う缺點がある爲,卵管造影法の補助的役割を演ずるに過ぎぬものであるが,操作容易且つ輕費である點で實地家にとつては甚だ便利である。然るに其の判定に關し,注入色素の定量的觀察を缺いており,且つ色素の腹膜以外の部分からの吸牧問題に就ても未だ異論があるので,余等は之等の點に就き基礎的實驗を試み,且つ本法と造影法との比較より卵管通否判定の境界となるべき排泄量を決定しようと試みた。
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