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こよなく学問を愛し,大切にされた先生でした.スタッフに慕われ,温厚で優しい先生でした.そして患者さんから寄せられる厚い信頼.山形大学医学部整形外科学教室第二代教授,荻野利彦先生は去る5月22日,68歳のあまりにも早すぎるご生涯を閉じられました.体調がすぐれない旨をご連絡いただいたのが4月末.直近まで手術もされていたそうです.前の週は,山形で若い教室員にご指導いただきながら,普段と変わらずお元気なご様子で手術されていたと聞いています.ご退職されてからも,学問への情熱は増すばかりで,先天異常の教科書のご執筆にも取り組まれていました.お仕事がほぼ仕上がり,次の目標はどうしようかと,冗談まじりに愛弟子に語りかけていた矢先でした.ご家族の皆様のご配慮で,悲しいお知らせを頂戴したのは日本整形外科学会学術総会が終わった翌5月25日になります.
荻野利彦先生は,1946年,現在の静岡県駿東郡でお生まれになったと伺っています.1965年,静岡県立沼津東高等学校,1971年,北海道大学医学部をご卒業され,北海道大学整形外科学教室に入局されました.松野誠夫教授のもと整形外科医の道を歩み始められました.美唄労災病院,函館中央病院での研修を経て,1975年に北海道大学に戻られています.それからは,上肢や先天異常の分野に一層力を入れて取り組んでこられました.裂手症の成立に関する研究で,多指症および合指症の関連性を明らかにされ(日本整形外科学会誌53:535-547,1979),同年,医学博士号を授与されています.1981年ウィーン大学,1982年にハンブルグ大学にご留学され,大勢の海外の先生との知己も得られました.ご帰国されてからは,北海道大学医学部附属病院講師(1982年),助教授(1989年)を務められた後,石井清一教授のもとで,札幌医科大学衛生短期大学部(1990年),同大学保健医療学部(1993年)の教授職を歴任されました.当時,荻野先生とともに学ばれた大勢の先生が,現在,日本のみならず世界でも活躍されています.そして1996年9月.初代,渡辺好博教授の後任として,山形大学医学部整形外科学講座に第二代教授として着任されました.以来,14年余りの長きにわたり,私どもを温かくご指導くださいました.
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