原著
子宮癌根治手術後に發生するリンパ潴溜症と其の臨床意義—リンパ漏洩症並にPsoas-absccss型旁結合織炎
小林 隆
1
,
古谷 博
1
,
鹽見 勉三
1
,
神谷 登
1
1東京大學醫學部産科婦人科教室
pp.91-104
発行日 1950年3月10日
Published Date 1950/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200324
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〔Ⅰ〕緒言
從來子宮癌の根治手術に於ては子宮旁結合織就中基靱帶の徹底的切除が主眼とされて來たが,之のみでは充分でなく更に所屬リンパ腺をも腫脹の有無に拘らず系統的且つ徹底的に廓清することが必要である.若し基靱帶剔除の徹底のみが目的であるならば腟式にも之を行い得るわけで,腹式との間に何の差異優劣も無いことになる.故に腹式手術の優秀さは寧ろ上記の如き廓清にあるとも云い得ないことはない.外國の現在及び日本の將來は兎に角として,少くとも今迄の日本のレ線治療成績は斯る廓清を無用と化す迄に至つていないことは周知の如くである(此の點に關するより詳細な論述は既に・産と婦・誌15卷10號11號357〜360,377〜380,に發表したから參照されたい.).
根治手術の斯る特徴から當然考えられることは,骨盤内の子宮旁結合織の廣汎な剥離と切斷,並に豐富なリンパ系統の剔除等により生理的リンパ流路の甚しい破壞と開放とが餘儀なくされることである.之に加えて大小動靜脈幹の結紮,切斷による正常血行の遮斷,欝血,迂廻等により一層之が助長されるものと考えられる.
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