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レントゲン技術員の白血球喰菌力に就て
渡邊 英二
1
1東京大學醫學部産科婦人科學教室
pp.387-389
発行日 1949年10月10日
Published Date 1949/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200263
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緒言
生體は外界の種々な侵襲に對し,各種の防禦作用を發揮するものであるが,此の際細菌に對する喰細胞機能,殊に白血球の貪喰作用は最も重要なものの一つである.而して斯る白血球の貪喰作用は生體の變調並に物理化學的刺戟に對し鋭敏に反應するものであるが,その一つとしてレントゲン線による影響が知られている.予はさきに廣島に於ける原子爆彈症患者につき,その白血球數の消長と創傷治癒力とが平行せぬことを認めて不審をいだき,數のみならずその質,換言せば喰菌能力を檢した結果,該患者に於て著明な低下を認めた。これは原子爆彈より放射された強力なγ線が,造血臟器,特に骨髓に障碍を與へたためと思はれるが,余はこの點から,厚生省關誠一郎博士の援助により,同じくγ線に常時曝露されるレントゲン技術員の白血球機能に如何なる變化が見られるかを調査した.蓋しレントゲン技術員の白血球數が早晩減少を來すことは周知の事實で,しかも數年これが業務に從事する人には往々身體違和,創傷治癒状況の不良なもの,抵抗力減弱を訴えるものがかなりあることを認め,それが必ずしも白血球數の消長と平行せぬことを知り,これが必要を痛感したからである.
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