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新生兒腟脂垢の形態的研究(その1)
木內 五一
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1慶應義塾大學醫學部産婦人科學教室
pp.260-265
発行日 1949年7月10日
Published Date 1949/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200224
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1.緒言
齧歯類の腟脂垢には,發情前期、發情期,發情後期,及び發情間期,の四期に區分せられる明らかなる周期性變化のあることは,周知の事實であるが,1933年Papanicolaouによつて,人の腟脂垢にも,卵巣周期に一致せる周期性變化が認められるということが發表されて以來,數多の研究者(E.G.Murray (1938) B.B.Rubenstein (1940)等)によつて研究せられ,人腟脂垢の研究業績は月經周期,ホルモン療法等の研究,更に近時は女性性器癌の早期診斷等にまで應用されるに至り,成熟婦人の腟脂垢に關する文献は極めて多數に見ることが出來る.然るに,新生兒の腟脂垢に就ての研究は極めて僅少で,新生児の腟内細菌,性器出血等に關するものに止り,腟脂垢の主なる成分たる上皮細胞,細菌,赤血球,白血球等の綜合的研究は,L.Fraenkel E.Phillip,M.Alexiu,及K.Herrnberger,N.Zaharescu等の發表がある他,我國には全く之を見ない.而して,之等諸文献は何れも概括的に過ぎて,明確ならざる憾あり,且其變化を齧齒類に於ける性周期の一周期に當てはめんとして考按せる點に於て疑義が認められる.
予は,之等の點を仔細に究明せんと欲し,昭和22年3月より,新生女兒の腟脂垢を逐日的に檢査した結果,次の如き成績を牧め,いさゝか新知見を得たので此處に報告する次第である.
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