感想及び随筆
分娩時吸入麻醉の創意者
坂倉 啓夫
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科
pp.75-76
発行日 1946年7月20日
Published Date 1946/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200079
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1853年4月7日Victoria女王の第7皇子Leo—poldの分娩に立會いクロヽホルム麻醉を使用したのはSir James Y.Simpsonと傳へられてゐるが,American Journal of Obst. & Gynee.40卷(1940)によればJohn SnowとSir Jamse Clarkが立會いSnowが麻醉掛として奉仕したと記載されてゐる。次にその抄録を記載す。
Victoria女王は1853年4月7日第7皇子Leo—poldを生んだ。Sir James ClarkとJohn Snowはお産に立會いSnowは醉掛として奉仕した。このことは産科學上の歴史的事件である。何故ならば王位にあるもので分娩に麻醉を用ひたのはこれが初めであつたからである。麻醉はハンカチに落した15滴のクロヽホルムによつて始められ,吸入は斷續的に53分間續けられた。その間無痛の状態となつたが,如何なる場合でも無意識にはならなかつた。それでも女王は滿足であつた。Clarkはこの重大なる事件が産科麻醉に影響があると思ひ,直にJames Y.Simpsonに書を送り 「この報告は貴兄に喜んで頂けると思ひます。今 後はこの地方で一般に断績吸入麻醇の形式で用 ひられるやうになることは疑ひありません。そ こで今日の出來ごとがAnesthesie a la reine といふ言辭として産科學に淺るでせう」と。お産の細い記錬は残つて居なかつた。
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