原著
トリクロールエチレン吸入麻醉による分娩時麻醉法—(豫報)
長內 國臣
1
,
渡邊 茂
1
1横濱警友病院産婦人科
pp.63-66
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200977
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1.まえがき
近頃輸入市販されている携帶用麻醉器にトリクロールエチレン,Trichlorethylene吸入麻酔器がある。これは短時間の淺い麻醉が簡易に行われることから,米英では娩出期の麻醉に用いられているそうである。事實英國のエリザベス女王が1948年第1子の分娩にこの麻酔を使われたという報道がわが國に傅わつて注目をひいた。
このトリクロールエチレン,Trichlorethyleneは米・英局方に收載された揮發性吸入劑で,英藥局ではトライリーン,Trilene,米國ではトリチレン.Tretylene或はトライマ,Trimarという名で親しまれ.藥理學上からはクロロホルムやクロルエチルと同様にハロゲン族で,最初獨乙(1864年)で紹介された沸鮎86〜88°Fの揮發性液體で,分子式はCCl2CHCl,特徴としてはクロロホルムに比し鎭痛効果が強く,しかも無毒性であること等があげられる。そして,これはアメリカで創製された飽和エーテルのデイビニール・エーテルと共に新しい吸入麻醉劑となつた。
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