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疾患の概要
がん疼痛は,原因および神経学的機序によって分類される.痛みの原因からは,(1)がんによる疼痛,(2)がん治療に起因する疼痛,(3)がん・がん治療と直接関連のない疼痛に分類される.一方,痛みの神経学的機序の観点からは,侵害受容体性疼痛である体性痛と内臓痛,そして神経障害性疼痛に分類される.
がんによる疼痛
日本緩和医療薬学会が発行している「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」では,「がんによる疼痛」を「がん疼痛」と定義している.
《体性痛》
皮膚や骨,関節,筋肉,結合組織への機械的刺激が原因で発生する.ほとんどのがん患者が急性あるいは慢性に経験する痛みであり,叩打,体動により増強する場合がある.骨転移は疼痛,病的骨折,脊髄圧迫症状,高カルシウム血症などの骨関連事象の原因となり,患者のQOLを著しく損なう場合がある.骨転移痛は,体性痛の一部であるが,腫瘍による骨浸潤の程度によって,侵害受容体性疼痛,神経障害性疼痛および両者が混在する.
《内臓痛》
食道,胃,小腸,大腸などの消化管の炎症や閉塞,肝臓や腎臓,膵臓など実質臓器の腫瘍による圧迫,被膜伸展などが原因となる.痛みの性状は,圧痛や漫然とした疼痛であり,部位は不明確な場合が多い.
《神経障害性疼痛》
末梢,中枢神経の直接的損傷および浸潤に伴って発生する.障害された神経の支配領域に一致して,さまざまな痛みや異常感覚が発現する.しばしば機能障害や自律神経系の異常(発汗異常,皮膚色調の変化など)を伴う.
がん治療に起因する疼痛
外科治療,化学療法,放射線治療など,がんに対する治療が原因となって生じる.術後痛症候群,化学療法後神経障害性疼痛,放射線照射後疼痛症候群が含まれる.婦人科腫瘍に対する化学療法の有害事象として,パクリタキセルやドセタキセル,シスプラチンによる末梢神経障害に伴う神経障害性疼痛がある.通常は経過とともに疼痛は軽減されるが,残存する場合および継続治療に影響する場合には鎮痛補助薬などで対応する.
がん・がん治療と直接関連のない疼痛
脊柱管狭窄症など,もともと患者が有していた疾患による痛み,新しく合併した疾患による痛み,あるいは廃用症候群による筋肉痛などのがんにより二次的に生じた痛みが含まれる.これらはそれぞれの疾患に合わせた鎮痛治療を行う.
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