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特集 外科医のための麻酔
術後の疼痛対策
Pharmaceutical treatment of postoperative pain
百瀬 隆
1
Takashi MOMOSE
1
1国立名古屋病院麻酔科
pp.195-202
発行日 1980年2月20日
Published Date 1980/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207375
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はじめに
術後の疼痛は個人差が大きいのと,従来これに著効を有する麻薬の副作用と,これの管理施行上の繁雑さなどのため,当然予想される疼痛を,手術をやつたのだから痛むのは当然と,患者も医師も考え,これへの対策は消極的であつたが,近年,非麻薬性鎮痛剤Pentazocineが登場して以来,この様相は一変し,これへの関心は高まり,数多くの研究がなされる様になつて来た.
術後痛の発生の様相を開腹術を例にとつて見ると,便宜上3期に分けられ1,2),第1期は術後の24時間で,創部痛,内部痛等で,所謂術後痛であり,耐え難い疼痛のための不眠,疲労,更に胸廓,横隔膜運動の抑制が誘因となつて起こる肺合併症や心循環不全などの術後合併症の防止のためにも,積極的な除痛対策が要求される.第2期は排ガスまでの2〜3日で,創部痛,内部痛の消褪と共に,胃ゾンデの苦痛がclose-upしてき,腸ガスの貯溜,腸蠕動による腹部膨満の苦痛が始まり,臥床体位による四肢躯幹痛,全身倦退感が増え,術前の患者への説得,鎮痛剤に代り,鎮静催眠剤の投与,体位変換が効を奏する.この時期に存続突発する異常に激烈な痛みは,腸間膜動脈血栓症,栓塞症,急性胃拡張,絞扼性イレウスの発生を疑い,対処が必要となる.第3期は,その後から抜糸までで,創部の異和感ぐらいになる.この時期の激しい痛みも重篤な合併症即ち,胆汁性,細菌性腹膜炎による縫合不全,癒着性イレウスなどの発生を考慮し,鎮痛剤,鎮静剤のむやみな使用は慎重でなければならない.
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