連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール
両側卵巣摘出術後に注意しなければならない卵巣遺残と悪性転化
市古 哲
1
,
松波 和寿
1
,
高木 博
1
,
今井 篤志
1
1松波総合病院産婦人科
pp.266-269
発行日 2014年3月10日
Published Date 2014/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103620
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はじめに
両側付属器切除術を施行したのちに数年経って,腹腔内に残存していた組織から腫瘍性・非腫瘍性病変が発生することがある.腹痛や腹部膨満感をきたす場合が多いが,無症状な場合も少なくない.これを卵巣遺残症候群(ovarian remnant syndrome : ORS)という1~10).その原因として,骨盤内炎症や腹部手術の既往,子宮内膜症などによる強固な癒着のため卵巣組織の一部(卵巣皮質)が残存することがある.近年,腹腔鏡下手術の急増と並行して,トロッカーやポートを介して腹壁に卵巣組織が着床することが増えつつある.通常はそのまま萎縮していくことが多いが,異所性に着床した卵巣組織が卵巣遺残症候群の原因となっている例が報告されている8, 10~13).
腫瘍性・非腫瘍性病変のいずれの場合も,根治には遺残卵巣組織の摘出が必要である.特に悪性転化例の30~50%は子宮内膜症が合併しており2, 3, 14, 15),子宮内膜症に対する両側付属器切除術では卵巣遺残症候群および遺残組織の悪性転化を念頭に置かなければならない.本稿では,子宮内膜症のため子宮と両側付属器切除後3年以上経って発生した原発性卵巣癌の自験例を紹介しながら,卵巣遺残症候群と悪性転化を再考した.
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