症例
MRIにて脂肪抑制を示さないfat balls様所見を認めた成熟嚢胞性奇形腫の1例
佐藤 賢一郎
1
,
森下 美幸
1
,
鈴木 美紀
1
,
北島 義盛
2
,
水内 英充
3
,
水内 将人
4
,
塚本 健一
5
,
藤田 美悧
5
1新日鐵室蘭総合病院産婦人科
2セントラル女性クリニック
3みずうちウィメンズクリニック
4札幌医科大学医学部産婦人科
5新日鐵室蘭総合病院臨床病理検査室
pp.184-187
発行日 2011年2月10日
Published Date 2011/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102577
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
今回,MRIにて脂肪抑制を示さないfat balls様所見を認めた卵巣成熟嚢胞性奇形腫の1例を経験した.
症例は71歳(閉経56歳),0経妊で,消化器内科で膵炎治療中にCTで骨盤内腫瘤を認め,紹介された.腫瘍マーカーは基準範囲内で,経腟超音波では嚢胞奇形腫と思われる腫瘍を認めた.MRIでは子宮後方に9.4×8.7 cmのT1強調像で中信号,T2強調像で高信号を示す嚢胞性病変を認め,さらに内部には1~1.5 cm程度のT1強調像で中信号,T2強調像で低信号を示す小嚢胞を含んでおり,脂肪抑制像では抑制されなかった.手術を施行したところ,右卵巣腫瘍は重量280 g,内容物は大部分が薄い褐色調の砂状の組織で満たされていた.病理組織検査では成熟嚢胞性奇形腫と診断され,嚢胞内に多量に認められた砂状物質はケラチン物質とそれを含めた変性・壊死物質であった.
稀ではあろうが,卵巣嚢胞性奇形腫の診断の際にはこのようなケースの存在も考慮すべきである.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.