今月の臨床 これを読めばすべてわかる―最新の産婦人科超音波診断
IV 産科における超音波診断─妊娠中・後期
[子宮と母体血管の超音波検査]
4.深部静脈血栓の診断
椎名 昌美
1
1近畿大学医学部堺病院産婦人科
pp.738-743
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102367
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深部静脈血栓症(deep vein thrombosis : DVT)と肺塞栓血栓症(pulmonary thromboembolism : PTE)は総じて静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)とされ,近年,周術期におけるVTE管理が注目されている1).DVTとは深筋膜より深い静脈内に血栓が生じる疾患で,上下肢いずれにも生じるが,下肢に生じやすい.妊娠中は血液凝固能の亢進,線溶系の低下,血小板の活性化,女性ホルモンによる静脈平滑筋弛緩作用,増大した妊娠子宮による腸骨静脈・下大静脈の圧迫による還流障害,帝王切開などの理由によりVTEを生じやすくなっている2, 3).自覚症状の有無にかかわらず,安全な周産期管理を行うために妊娠中のDVTを診断する必要性が高まりつつある.DVTの診断には下肢超音波検査が広く用いられている3, 4).下肢超音波検査は,造影検査と異なり無侵襲的で,外来にて容易に行えることから急速に普及してきた.この稿では周産期管理に必要な下肢超音波検査のうち,緊急性のあるDVTの診断を主に述べる.
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