Japanese
English
特集 肺血栓・塞栓症—最近の動き
深部静脈血栓症
Deep venous thrombosis
中島 伸之
1
Nobuyuki Nakajima
1
1国立循環器病センター心臓血管外科
1Department of Cardiovascular Surgery, National Cardiovascular Center
pp.957-960
発行日 1989年9月15日
Published Date 1989/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205539
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はじめに
深部静脈血栓症は,疾病としてすでに確立された概念であり,それほど稀なものではない。しかし.本邦においてはそれでも症例数自体が外国に比較して少ないことに起因するためか,この病気に対する理解は依然として捉え難く,漠然としている感を免れない。特に,我が国においてはこの病気へのアプローチは,その診断および治療の両側面から,外科側,特に血管外科側から主になされてきているので,どちらかと言うと治療面への興味が主体となっていて,この病気の本態的な面に対する考察は少ないように思われる。
深部静脈血栓症と肺塞栓症との結びつきは欧米の文献では,密に関係しているという点に関しては疑いをはさむ余地はないようである。事実,欧米においては深部静脈血栓症の発症頻度そのものが高く,それに続発する合併症としての肺塞栓症の発生頻度も高いので注目されている分野である。
このように見てみると,我が国における深部静脈血栓症を欧米におけるそれと比較してみると,基本的な病態は同じであっても,その原因や発展の様式に微妙な相違があるのではないかと考えられる。本稿では,我々の施設で経験した症例を中心として解析し,欧米との対比において検討を加えて述べてみたいと思うが,この特集の性質上,深部静脈血栓症自体について考察するのではなく,肺塞栓症の大きな一つの原因である深部静脈血栓症という観点より検討を加えたい。
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