今月の主題 「考える」診断学—病歴と診察のEBM
考える診断学の実際
救急編
深部静脈血栓症
東 尚弘
1
,
福原 俊一
2
1聖路加国際病院内科
2京都大学大学院医学研究科
pp.1497-1500
発行日 2000年9月10日
Published Date 2000/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402907623
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深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:DVT)は,1988年の厚生省系統的脈管障害調査研究班の77施設調査報告によると,昭和60年度で年間650例の発生例が認められており1),日本静脈学会事務局を中心とした1995年の50施設のアンケート調査では506例が発生している2).この2つの調査によると単純計算で施設当たりの発生例数は1.2倍となっており,ほかにも,発生頻度の増加を指摘する報告も多い3).食生活の欧米化から,今後増えていくものと思われる.特に近位DVT(=膝窩静脈より上)は,放置しておくと重篤な肺塞栓を起こす可能性があり,その発見と適切な治療が非常に重要である4).確定診断は静脈造影検査でなされるが,侵襲的な検査であり,また検査そのものによってDVTが発症する危険もある(約3%)5).したがって,この検査の前に診断を絞り込む必要がある.治療は抗凝固法が一般に行われ,DVTの増悪また肺塞栓の予防にきわめて有効である(DVTの再発を5%以下に,肺塞栓の発症を1%以下に抑える)が,合併症としての出血性リスクも高くなる(5%).したがって,不必要な抗凝固療法を避けるための診断努力が不可欠である.
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