今月の臨床 産科と凝固異常
産科診療と凝固異常
13.深部静脈血栓
三橋 直樹
1
1順天堂大学医学部産婦人科
pp.333-335
発行日 1998年3月10日
Published Date 1998/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409903210
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妊娠中の血液性状の変化および子宮の増大による静脈の物理的圧迫により,妊娠中および分娩直後は血栓症の発症頻度が高い.問題となるのは骨盤内の静脈と下肢の静脈である.この部位の深部静脈に血栓ができた場合,局所の症状,また末梢の症状も問題となるが,最も危険なのは血栓が飛んで肺動脈に塞栓する肺塞栓を起こすことである.
従来,本邦では血栓性の疾患は欧米に比較し少ないとされてきた.しかし生活様式の欧米化のためか,この血栓性疾患は急激に増加している.産科における妊産婦死亡の原因でも,欧米ではかなり以前から肺塞栓は死因の第一であったが,本邦でも出血,感染などによる死亡が相対的に減少したこともあり,血栓性疾患による死亡が最大の妊産婦死亡原因となっている.本稿では,妊娠に関連した深部静脈血栓(deep venous thrombosis:DVT)について概説する.
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