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はじめに
日本の医療は高度成長のなか過疎地域の小さな町にいっても小さいながら入院施設のある病院があり,すべての国民が自分の生活圏のなかである程度の医療が受けられるようになった.また,人口過密地域においては日本の医療の特徴である病床数が小さい病院が多数あり,生活圏や病院の特徴から患者がどこに行くかを自由に選択することが可能であった.しかし,患者の高齢化,医療の高度化,社会的問題などさまざまな要因により医療提供が困難になっている.
東京と東京に隣接した首都圏の人口過密地域では,医療提供の総量としてはほかの地域に比べると充足しているが,1つ1つの医療施設の規模が小さいため常にほぼ満床状態であり,近隣の施設で重症例が発生しても受け入れることができないことが生じやすい状態にある.このような場合には他医療圏もしくは他自治体の病院への受け入れ要請を余儀なくされ,受け入れ可能な病院を探すことに時間がかかるため,社会からは「たらいまわし」と揶揄されている.しかし,どの医療施設も過重労働のもとに,さまざまな工夫をしながら受け入れ可能な状態を維持しようと努力をしている.また,周辺部の過疎地域においては分娩取り扱いを継続している施設がその地域の周産期医療の最後の砦としてどのような状況においても地域の医療を守ろうという地域完結型医療である広域医療圏統合ネットワーク(integrated health-care network : IHN)を構築せざるをえない状況になっており,ここでも医療従事者の過重労働が問題となっている.われわれ周産期にかかわる産婦人科医師は女性とくに,妊婦と生まれてくる赤ちゃんに健康であってほしいと願い,よりよい医療を提供するために努力し続けている.千葉県では千葉県周産期医療ネットワーク事業が2008年4月より開始されており,その取り組みと現状を報告したい.
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