私の病院
千葉県鶴舞病院
中野 朝恵
pp.62-64
発行日 1957年1月15日
Published Date 1957/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910272
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私達の病院を紹介するに当り同じ職業にある皆様にこんな山の中にもこの職業に対し情熱をもつて勤務してる事も知つていたゞきたい事です。寒い冬北の山国を想わせる様な地,新緑の頃には水もしたゝるような濃い緑!都会では昧わえない新鮮な空気。私達はこの澄んだ清い環境の中に置かれてじつと自己をみつめる機会が多いのですが,或る時は青春がこんな山の中で終つてしまうかと云う人間的な欲望が頭をもたげて来る事もありますが,だからと云つて何も都会でだけに欲望が満たされる訳でもないのだと思うと,却つて愛着さえ感じて参ります。夜のとばりが下されゝば辺りは静寂そのもの,耳を澄ませば虫の声がかすかに聞える中で読書に耽り乍ら色々な空想にひたる事も楽しいことだし お裁縫も教えたり教えられたり自分達の身につける物位は結構作つてしまう楽しさ,向学心に燃えて居る人は物理,英語,数学各々特異とする先生方に勤務が終つてから教えて戴き,一歩一歩目的に近づいて行く。又スポーツの好きな方は職員の男性郡と足下が見えなくなる迄テニス,バレー,卓球等に興じて楽しんで居るし,のんびりした方はお弁当持参で魚釣りに出掛けてその収穫に観声を上げて帰つて来る姿!どんな所にも楽しむ術はあるのだと云う風に誰も彼も田舎の生活を存分楽しんでいます。と同時にこうした辺鄙な環境にもめげない人々だけに勤務の面にも精一杯励んで居ります。
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