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はじめに
妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降に高血圧や蛋白尿を認める病態であり,重症例では母児に重篤な影響を及ぼす.多くの研究者が多岐にわたる解析を行ってきたがいまだその本態は明らかでなく診断基準によって判断される「症候群」として取り扱われている.わが国における診断基準そのものも,2005年4月から診断項目として浮腫が削除され,名称も妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群へと変更された.妊娠高血圧症候群は,高血圧に蛋白尿を伴わない妊娠高血圧と蛋白尿を伴う妊娠高血圧腎症とに主に分類され,妊娠高血圧腎症は妊娠高血圧に比べ母児予後は不良であるとされている.
母体側から考えると,妊娠高血圧症候群は分娩後出血ならびに産科的塞栓症などとともに妊産婦死亡の主要な原因の1つとなっている.また,胎児側から考えても妊娠高血圧症候群は,子宮内胎児発育不全などと密接なかかわりがありその管理は重要である.
胎児機能不全とはnon─reassuring fetal statusの邦訳であり,「妊娠中あるいは分娩中に胎児の状態を評価する臨床検査において“正常ではない所見”が存在し,胎児の健康に問題がある,あるいは将来問題が生じるかもしれないと判断された場合をいう」と定義されている1).以前から胎児仮死,胎児ジストレスという言葉が存在したが,現代の医学では胎児そのものの酸素飽和度,血圧,体温,尿量など種々のバイタルサインを直接正確にモニタリングすることは不可能であり,胎児の状態を正確に診断することは困難であった.このため胎児心拍数モニタリングなどあくまで子宮外からの間接的な胎児well─beingの評価結果に基づく幅広い概念として胎児機能不全が提唱され承認・決定された.
今回は,妊娠高血圧症候群と胎児機能不全について概説したい.
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