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はじめに
妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension:PIH)は,出血や産科的肺塞栓などとならび妊婦死亡の主要な原因であり,妊娠合併症のなかで最も注意すべき病態の1つである.妊娠高血圧症候群は,妊娠高血圧腎症(preeclampsia),妊娠高血圧(gestationa hypertension),加重型妊娠高血圧腎症(superimposed preeclampsia),子癇(eclampsia)の4つの病型に分類される.
子癇は古くから妊娠高血圧腎症の最重症型で,「妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし,てんかんや二次性痙攣が否定されるもの.痙攣発作の起こった時期より,妊娠子癇・分娩子癇・産褥子癇と称する」と定義されている.妊娠高血圧症候群は全妊婦の4~8%に,子癇は0.05~0.3%にみられ,そのうち妊娠子癇が最も多く約38~53%,分娩子癇が11~44%,産褥子癇が18~36%となっている1).また,産褥よりも分娩前のほうが胎盤早期剥離やHELLP症候群,DICなど重症の合併症を起こしやすく,特に妊娠32週未満の発症では母児の死亡率・有病率が高くなるという報告もある2).
また,近年CTやMRI画像検査の進歩に伴い,その病態としてreversible posterior leukoencephalopathy syndrome(RPLS)やposterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)などの疾患概念が提唱され,血管攣縮と周囲の脳浮腫が注目されている.
本稿では,実際の子癇症例の提示に加え,病態および診断,管理法を中心に解説する.
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