連載 Estrogen Series・86
ホルモン療法の停止後,乳癌発生の急減をみた
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.750
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102106
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かつて,WHI(Women's Health Initiative)の調査結果はエストロゲンとプロゲストロンを組み合わせたホルモン療法に深い影響を与えた.その最初の報告(JAMA 288 : 321─333, 2000)のあと,米国での更年期女性に対するホルモン療法は急激に減少した.さらに,その減少に続いて,乳癌発生率のかなりの減少がみられた(NEJM 356 : 1670─1674, 2007).「これは乳癌の発生がホルモンの使用によることを示唆するものであるが,しかしその原因は特定されない」という.
2008年12月12日にテキサス州サンアントニオで開かれた第31回サンアントニオ乳癌シンポジウムで興味深い発表があった.WHIのデータを再検討した結果によれば,エストロゲン(E)とプロゲステロン(P)の組み合わせによるホルモン療法を受けた更年期後女性にみられる乳癌の発生率は,ホルモン療法の中止後にかなり短期間に低下した.すなわち,このグループでの乳癌発生リスクはホルモン療法中止後2年でホルモン使用以前のベースラインに戻った.WHIデータによれば,E+P使用の女性群ではホルモン療法の試用期間が平均5.6年で,その間,プラセボ群に比較して26%の乳癌増加がみられた.今回のWHIデータの再検討には観察的研究の結果も含まれており,そのため時間経過による経過観察が可能であると発表者は述べている.
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