連載 Estrogen Series・96
ホルモン療法と乳癌の発生について WHIのフォローアップ
矢沢 珪二郎
1
1ハワイ大学
pp.955
発行日 2011年7月10日
Published Date 2011/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102735
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米国で2002年に発表されたWHI(Women's Health Initiative)の結果は大規模なRCTとして米国における(そして世界における)ホルモン療法(Hormone Therapy : HT)に大きな影響をおよぼした.HTは1970年代当たりから普及し,その後,更年期およびそれ以後に対するあたかも万能薬のごとく受け入れられた.一時は「永遠の若さ,永遠のホルモン」という風な受け入れ方が,患者,マスコミ,医療者側に存在し,その後ろで製薬業界は大いに攻勢を仕掛けた.しかし,2002年に発表されたWHIの結果は,これまでのエストロゲン万能の態度に深刻な疑問を投げかけることになり,現在にいたるまでフォローアップと見直しが続いている.しかし,WHIのもつデータとしての力は大きく,その統計の意味するところは決して無視できない.
ここでご紹介するのは,2010年にJAMA誌上に発表されたChlebowskiらによる論文である.WHIに参加した50~79歳の女性たちのうち12,788人に関するものである.WHI発表後の期間を含めた11年間にわたるフォローアップで,特にHTと乳癌との関連に焦点を当てたものである.文中,Eはエストロゲン,Pは黄体ホルモンを表すが,実際には,WHIにおいてはPremarin 0.625 mgとProvera 2.5 mgの2種のホルモン製剤に限定されて使用されている(この限定は,WHIという大規模研究の弱点でもある).この調査でE+P使用群はプラセボ群と比較検討された.
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