今月の臨床 性器脱診療の最前線
子宮摘出後の腟脱への対応
古山 将康
1
,
錢 鴻武
1
1田附興風会医学研究所北野病院女性骨盤外科センター
pp.733-739
発行日 2009年5月10日
Published Date 2009/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102102
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はじめに
子宮全摘術は,一般婦人科手術として,子宮筋腫,子宮腺筋症,子宮癌などさまざまな疾患に対して広く施行されている術式である.Oxford Family Planning Associationによる大規模コホート研究によれば,55歳までに約20%の女性が子宮全摘術を受けるとされており,子宮全摘術の既往は骨盤臓器脱のリスク因子である1).
子宮全摘術の適応にかかわらず,子宮を摘出された患者の腟断端脱のリスクは3.6/1,000人・年である.そのうち,骨盤臓器脱に対して子宮全摘術を施行された者は,それ以外の者よりも,腟断端脱を罹患する確率が5.5倍(2.9対15.8/1,000人・年)も上昇する2).このように,腟断端脱は一般婦人科診療にてしばしば遭遇する疾患であり,その治療に苦慮することも多い.
従来,腟断端脱に対して,わが国では腟壁縫縮術または腟閉鎖術が行われてきたが,術後の性交障害や性機能の喪失が大きな問題となる.欧米諸国では古くから,腟断端の固定法として,仙骨子宮靱帯固定術(McCall法,Shull法),腸骨尾骨筋膜固定術(Inmon法),仙棘靱帯固定術,仙骨腟固定術といった,多彩な手術が行われており,良好な成績が報告されている.
この章では,腟断端脱に対する術式を紹介するとともに,その長所,短所および予後について説明する.
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