今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 D生殖補助医療(ART)
【調節卵巣刺激法】
69.現時点で最適と考えられる調節卵巣刺激法について教えてください.
福井 淳史
1
,
藤井 俊策
1
,
水沼 英樹
1
1弘前大学医学部産科婦人科
pp.552-554
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102058
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体外受精・胚移植(IVF─ET)を施行する際には複数の成熟卵胞を得ることが必要で,そのためにhMG製剤やrhFSH製剤による卵巣刺激が行われている.しかし,卵胞の発育に伴い大量のエストロゲン分泌が起こるために,そのポジティブフィードバック作用により内因性のLH分泌が誘発され,採卵前の排卵や卵の質の低下など,IVF─ETの成績を著しく低下させてしまう.したがって,内因性のLH分泌をいかに抑制できるかは,IVF─ETの成績を向上するための必須の要件であり,その方法としてGnRHアゴニストやアンタゴニストが応用されている.欧米ではGnRHアンタゴニスト法が普及しており,アゴニストとほぼ同数に施行されている1)が,GnRHアンタゴニストの導入が遅れたわが国では,アゴニストを用いた排卵誘発法がいまだに一般的であり,本稿ではGnRHアゴニストを用いた排卵誘発法を中心に解説する(GnRHアンタゴニストについては別項で述べられているので,そちらを参照されたい).
GnRHアゴニストは下垂体に直接作用し,GnRH受容体をダウンレギュレーションすることにより,下垂体からのゴナドトロピン放出を抑制する.しかし,ダウンレギュレーションが完成するまでには数日かかり,その間下垂体からはいわゆるflare─upと呼ばれる一過性のゴナドトロピンの放出が起こる.これは卵胞発育を刺激するので,このflareを避けるか,あるいは利用するかにより排卵誘発法は,long法,short法と大きく2つに分けられる.
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