今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 C人工授精
【人工授精の方法】
63.AIDの妊娠率と問題点について教えてください.
見尾 保幸
1
1ミオ・ファティリティ・クリニック
pp.536-537
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102052
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
非配偶者間人工授精(artificial insemination donor:AID)は,夫以外の男性から提供を受けた精子を妻の頸管内,あるいは,子宮腔内に注入することにより授精をはかる方法であり,無精子症を主とする重度造精機能障害の夫婦が対象となる1).適応夫婦を選択する際には,少なくとも配偶者間人工授精(artificial insemination with husband's semen:AIH)の場合と同様に,男性因子以外の原因を除外できていることが原則となり,実際の実施に関しても,その手順はAIHと同じである.また,当然のことながら,本法の実施には,大きな社会的,倫理的,家庭的問題が含まれており,これらを十分に踏まえた遂行が重要であるが,われわれが何より最優先に深く考慮すべきは,本法により誕生する子どもたちの安寧であり,本法にかかわる当事者の揺るぎない自覚,深い認識,そして,大きな決断が必要であることは言を待たないが,本稿でその内容に触れることはあえて差し控え,他稿に委ねたい.
わが国においては,AIDは1948年以降特定の医療機関で実施され,1996年それを追認する形ではあるが,日本産科婦人科学会が「『非配偶者間人工授精と精子提供』に関する見解」を会告として示し2),現在わが国では,これに基づいて一部の医療機関において実施されている.最新のわが国におけるAID治療成績が日本産科婦人科学会から報告されており(表1)3),それによると,妊娠率は対症例23.2%,対周期6.3%である.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.