今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 C人工授精
【人工授精の方法】
62.人工授精実施のタイミングと方法について教えてください.また,その成功率と治療の限界はどのくらいでしょうか.
見尾 保幸
1
1ミオ・ファティリティ・クリニック
pp.533-535
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102051
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[1]はじめに
人工授精(artificial insemination)は,何らかの原因により卵管内の卵子への到達精子濃度が低下し,妊娠成立が妨げられている場合の選択肢である.
当然のことながら,自然妊娠成立に不可欠な要因としては,①良質卵子の排卵,②卵管采の卵子捕獲,③必要十分な健常精子の存在,④正常受精の成立,⑤良質な胚発生,⑥卵管の胚移送機能,⑦着床可能な子宮内環境などが考えられる.このうち,人工授精で妊娠成立を期待するためには,上記の③以外の条件がすべて備わっている必要がある.筆者の知るオーストラリアを始め,欧州各国では,この原則を十分に踏まえ,基本的に,精液検査と合わせて,本法実施前に診断学的腹腔鏡検査(lap/dye test)を行い,骨盤内所見(卵管疎通性,卵管采形状,卵管・卵巣周囲癒着の有無など)を直視下に評価し,適応夫婦を決定している.
しかし,わが国では,挙児希望夫婦に対する治療を進めるうえで「ステップアップ(step─up)」の考え方が広く受け入れられており,治療法の選択の際に,何よりも手短で,簡便な取り組みから優先的に実施される傾向が強い.その結果として,タイミング法→人工授精→体外受精→顕微授精といった,一方向の順序で治療が選択されることが多く,人工授精はタイミング法に次ぐ第二選択の治療と位置付けされている.しかし,筆者は,その考えに同調できず,むしろ,適正な実施方法に基いて,上述の適応夫婦に対してのより自然な妊娠成立を得るきわめて有効な治療法と考えている.
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