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[1]はじめに
男性不妊症患者の診断には,内分泌検査として,LH,FSH,テストステロン,遊離テストステロン,プロラクチン,エストラジオールなどの測定を行う.ホルモン分泌には日内変動があるため,午前中の採血が推奨されている.図1に視床下部─下垂体─精巣軸の模式図を示す.視床下部,下垂体,精巣はお互いに合成分泌するホルモンにより促進,抑制を受け,調節されている.視床下部からは,GnRH(gonadotropin releasing hormone)が分泌され,下垂体からのFSH,LHの分泌を促す.逆に血中テストステロン,エストラジオール濃度が高くなると,GnRHの分泌は抑制される.LHは下垂体前葉から分泌され,精巣のleydig細胞を刺激し,テストステロンの産生を促す.テストステロンは全身の多くの標的臓器に対してさまざまな働きをもつ.精巣内では,精細管内のsertoli細胞に働き造精機能を助ける.テストステロンは,視床下部,下垂体に作用し,GnRH,LH,FSHの分泌を抑制する.FSHも下垂体前葉から分泌され,精細管内のsertoli細胞に働き,精子形成を促す.sertoli細胞からは,種々の物質が産生されている.そのなかでインヒビンは下垂体に作用し,LH,FSHの分泌を抑制する.プロラクチンも下垂体前葉から分泌され,leydig細胞を刺激し,テストステロンの過剰産生を抑制する働きがある.
造精機能障害を呈する男性不妊症患者では精巣機能低下により,低テストステロン血症を引き起こすことが多く,その場合には視床下部─下垂体─精巣間のネガティブフィードバック機構が作用しないことからゴナドトロピンが上昇し,高ゴナドトロピン性精巣機能低下症となる.逆に下垂体前葉ホルモンであるゴナドトロピン分泌障害から精巣機能低下を生じたものは低ゴナドトロピン性精巣機能低下症と呼ばれ,造精機能障害の原因の1つである1).
一般的なホルモン値から考えられる病態,および稀なゴナドトロピン欠損症の病態を表1にまとめた2~4).
負荷テストは,視床下部,下垂体,精巣の機能的予備能を検査する方法である.負荷試験の適応になるのは,低ゴナドトロピン性性線機能低下症を疑う場合が多い.すなわち,FSHやLH,テストステロンが低値の場合に施行される.以下種々の負荷試験について概説する.1つ注意をしなければならない点はFSH,LHが低値でテストステロンが正常か高値の場合である.この場合には,先天性副腎過形成(congenital adrenogenital hyperplasia:CAH)の可能性があるため,副腎皮質ホルモンの検査や遺伝子診断を行う必要がある.文献上,CAHに対してコルチゾールの補充を行い,無精子症症例から精子が出現したという報告もある5).
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