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[1]はじめに
女性側の不妊原因のうち,卵管障害は約40%と最も多く,なかでもクラミジア感染症による卵管通過障害や卵管周囲癒着などの卵管障害は不可逆的である.
卵管性不妊症の診断には,一般に子宮卵管造影(hysterosalpingography:HSG)を行う.HSGは子宮・卵管の形態,および卵管通過性の診断と同時に,拡散像により骨盤内の癒着の有無を推定できるが,その診断能には限界がある.すなわち,経腟的腹腔鏡(transvaginal hydrolaparoscopy:THL)とHSG所見を比較すると,卵管通過性の一致率は82.4%,卵管周囲癒着の一致率は67.6%と,HSGの正診率は比較的低い1).よって,HSGだけの情報でいきなり体外受精・胚移植(in vitro fertilization─embryo transfer:IVF─ET)を適応するべきではなく,診断的腹腔鏡検査を行うことが望ましい.ところで,診断的腹腔鏡検査は短時間で完了できるため,挿管を伴う麻酔や全身管理を要する経腹腹的腔鏡は侵襲が大きすぎるのではないかという指摘があった.そこでわれわれは1999年よりTHLを導入し,卵管性不妊症の診断を積極的に行い,その後の不妊症治療方針の決定,すなわち経腹的腹腔鏡下に行う癒着剥離術や卵管再疎通術の適応,あるいはIVF─ETを選択すべきかの判断に利用してきた2).
THLの利点は表13)に示すように,経腹法と比較して,腹部切開が不要,静脈麻酔あるいは局所麻酔で対応が可能,外来でも可能実施で,入院日数は短期間で十分,液相下での観察は気相下で行う観察よりも鮮明であるなどがある.また,このような経腟的操作は,日常診療でダグラス窩穿刺,あるいは経腟的採卵などの操作に習熟するわれわれ産婦人科医にとっては,経腹的内視鏡操作より簡便であると考える.
一方,THLの不利な点として,単一鉗子による操作で視野も制限されることから,手術的操作には不向きである.
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