今月の臨床 エキスパートに学ぶ―漢方療法実践講座
【処方の実際】
3.不育症
假野 隆司
1
1医療法人假野クリニック
pp.1072-1075
発行日 2008年8月10日
Published Date 2008/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101835
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はじめに
漢方医学には不育症(免疫性習慣流産)の概念がない.このため,同症の治療はもっぱら切迫流産を適応に行われてきた.代表的な方剤は金匱要略婦人妊娠病篇に「婦人懐妊,腹中痛,当帰芍薬散主之」と記載された安胎薬の当帰芍薬散である.一方で,中医の漢方医は不妊や流産の原因を腎虚と考えるため補腎剤を中心に運用している.ところが,Takakuwaら1)が抗リン脂質抗体陽性不育症に対する柴苓湯(蒼朮含有)の臨床的有効性を発表して以来,西洋医を中心に処方が広まり,一部の自治体で保険適用になる現状に至った.
本稿では,柴苓湯の不育症に対する有効性を自験例を中心にして,構成生薬の朮が蒼朮の製剤(蒼朮柴苓湯 : ツムラ)と白朮の製剤(白朮柴苓湯 : クラシエ)の使い分けの重要性を中心に論考したい.
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