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はじめに
漢方療法は天然三界,つまり動物,植物,鉱物から得られる天然薬物である生薬を組み合わせた方剤を用いるが,中国では頻用されている生薬だけで300種以上,一説には8,000種ともいわれており,日本薬局方や日本薬局方外生薬規格には約200種類が収載されている.これらの組み合わせは無限ともいえるが,臨床上,多くの処方の氾濫を避け,保険医療上利用できる方剤を明らかにする目的で,厚生省より昭和47年から49年にわたって,漢方製剤に関する基本的取扱い方針と,一般用医薬品として承認される漢方210処方に関する成分・用法・容量・効能効果など具体的な基準が公表された1).以来,これが日本の漢方の規準となっており,210処方のうち,現在,148種類の漢方製剤(147種類がエキス剤を中心とする内服薬,1種類が外用の軟膏)と煎じ薬用生薬159種類が薬価基準に収載されている.
このなかでどの方剤を使用するのかは,難しい問題である.周知のとおり,漢方医学における診断は「証」によって表わされるが,証自体が西洋医学的には理解しがたいものであると同時に,その証に対してどの方剤を処方するのかということにも諸家の意見がある.また,よくいえばテーラーメイド,さじ加減が可能であることが漢方療法の魅力であり,多くの処方の使い分けを知っていてそれらを使い分けることこそ漢方療法の醍醐味ともいえる.しかし,これらは西洋医学を主とするもの,特に初心者には困難であることには異論がなく,多くの入門書と呼ばれるものには「まず,いくつかの基本となる方剤を使い,それから応用を考えましょう」とある.では,基本の方剤,つまり本稿のタイトルである「これだけは知っておきたい産婦人科漢方処方」とは何なのか?これもまた難しい問題であるが,本稿ではこれを産婦人科において頻用されており,外来に常備すべき代表的漢方処方とは何かと考え,それらについて概説する.
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