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編集後記
岡井 崇
pp.904
発行日 2008年6月10日
Published Date 2008/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101805
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<事故調の行方>
いわゆる“医療事故調”の設立とその法制化に向けて,第二次試案,続いて第三次試案が公表され,わが日産婦学会もそれらに対して公式の“見解と要望”を発表した.この動きは,日本医師会が医師法第21条の拡大解釈による“医療関連死”の警察への届け出の義務化がもたらす弊害をなくすために厚労省に働きかけたのを契機としている.厚労省を通じてか,直接医師会の要望に呼応してかは定かでないが,自民党内に“医療紛争処理のあり方検討会”が設置され,「診療行為に係る死因究明制度等について(案)」という上記法制化の骨格が示された.それに則って検討された厚労省の試案が,現在,医療関連諸学会を中心に一大論争を巻き起こしているのである.
一方,野党にも“医療”に関心を持つ議員は少なくないが,問題は現下の政局である.“年金”,“ガソリンの暫定税”等々で躓く与党を一刻も早く解散・総選挙に追い込みたいの一念から,自民党案には理もなく悉く反対する腹づもりのようだ.元来,“事故調”制度は厚労省のみで法制化できるものではなく,司法当局との折衡や国民の合意形成も必要で,政治的に決着を付けられるべきであろうが,こんなときに,政局に紛れ,政治の場で真剣な議論がなされないのはわれわれにとって不幸なことである.今後の見通しはまったく立っていない.
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