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編集後記
岡井 崇
pp.210
発行日 2012年2月10日
Published Date 2012/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102922
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思い返せば,昨年,日本は大自然の力の前にひれ伏すしかありませんでした.東北地方を襲った大地震と巨大津波,列島を蹂躙して廻ったゲリラ豪雨,映像で見るそれらの惨状は目を覆うばかりでした.なかでも私が衝撃を受けたのは,裸の鉄骨を晒ける原発建屋の惨たらしい外貌です.原子力の制御技術という人類の知恵の結晶をあれ程までに敢え無く粉砕してしまう,こんな自然の猛威は千年に一度にしてもらいたいものです.
さて,今年の日本,政権与党が“被災地の復興”や“社会保障と税の一体改革”などの重要事案に精力を注入せざるを得ないことは理解できます.しかし,それはそうとしても,医療の方は一体どうなってしまうのでしょうか?医師の不足,偏在と過重労働への対策,初期研修の改革と専門医制度の確立,混合診療の問題,医療安全と医師法第21条の問題などなど,山程ある医療問題のどれひとつをとっても,昨年は1歩も前に進まなかったように思います.それは,厚労大臣がタバコ税の値上げ以外に何らインパクトのある発言をしていないことに象徴されるように,現政権が医療問題を軽視しているから,としか言いようがありません.その姿勢を正させるためには,関係者の政府・厚労省への働きかけを強める必要があります.今年こそ,われわれ医療提供者が大きな声を上げ,医師会と医学会の力を結集して医療問題の解決に向けての政策論議を促す年にしたいものです.
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